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ビカクシダにおすすめの肥料は?水苔の微生物と窒素から考える肥料の選び方

独特な葉姿と、板付けなどの個性的な仕立て方が魅力のビカクシダ。

ビカクシダを元気に育てるために、光の当て方や時間、風、水やり頻度など気を付けたいポイントはたくさんあります。その中でも「どんな肥料を選べばいい?」「液体肥料と固形肥料はどちらがいい?」と迷う方も多いのではないでしょうか。

ビカクシダの肥料を考えるうえで、まず注目したいのが「水苔」という栽培環境です。

一般的な培養土と水苔では、肥料を与えたあとに根の周囲で起こることも同じとは限りません。

そこで今回は、植物の成長に欠かせない「窒素」に注目してみました。

水苔の特徴と性質、アンモニア態窒素と硝酸態窒素、微生物による「硝化」、さらにアンモニア態窒素に偏った場合に起こりうる「アンモニア障害」まで掘り下げながら、ビカクシダの肥料選びについて考えてみます。

今回のテーマは、単に「窒素が多い肥料を選ぶ」ということではありません。 水苔という環境の中で、窒素がどのような形で存在し、変化するのかまで見ていきます。

なお、肥料だけでなく、置き場所・水やり・季節ごとの管理など、ビカクシダの基本的な育て方から確認したい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

1.ビカクシダでよく使われる培地「水苔」とは

ビカクシダの栽培に使用する水苔+ タップして拡大閉じる ×

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ビカクシダの栽培に使用する水苔

ビカクシダは、熱帯・亜熱帯地域などに自生する着生植物です。

一般的な植物のように地面に根を張るのではなく、自然界では樹木の幹や枝などに着生して成長しています。

この着生する特性を活かして、園芸でも一般的な培養土だけではなく、水苔(ミズゴケ)を使った栽培が広く行われています。

水苔は、湿地などに生育するミズゴケ類を乾燥させた園芸資材です。

ビカクシダでは、吸水させた水苔で根を包み、板やコルクなどに固定する「板付け」にもよく使用されています。

ここで注意しておきたいのは、

水苔は土の代わりに使用することはできても、「土そのもの」ではない

ということです。

一般的な土壌と水苔の違い+ タップして拡大閉じる ×

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一般的な土壌と水苔の違い
SOIL 一般的な土壌

一般的な土壌は、鉱物、有機物、水、空気、そしてさまざまな微生物などによって構成されています。

SPHAGNUM MOSS 水苔

一方、水苔は植物由来の有機質が主体です。

そのため、同じ肥料を与えても、肥料成分の保持や変化、微生物による窒素循環などが土壌と同じように起こるとは限りません。

2.なぜビカクシダ栽培に水苔が好まれるのか

ビカクシダ栽培で水苔が使われる理由+ タップして拡大閉じる ×

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ビカクシダ栽培で水苔が使われる理由

ビカクシダの栽培に水苔がよく使われる大きな理由のひとつが、優れた保水性です。

水苔はたくさんの水分を保持できるため、板付けした状態でも根の周囲に一定の水分を保ちやすくなります。

一方、水苔の内部には空隙もあります。

適切な量の水苔を使い、乾湿のメリハリをつけて管理すれば、水分を保ちながら根の周囲に空気も存在する環境をつくることができます。

さらに軽量で、板やコルクなどに固定しやすいことも大きなメリットです。

01 保水性

根の周囲に一定の水分を保持しやすい。

02 通気性

適切に管理すれば、水分と空気の両方を確保しやすい。

03 軽さ・扱いやすさ

板やコルクなどに固定しやすく、板付けに使いやすい。

こうした特徴から、水苔はビカクシダの栽培に適した培地として広く利用されています。

ただし、ここで気になるのが、「水苔そのものには、植物の栄養がどのくらい含まれているのか」という点です。

自然暮らしでは、水苔に含まれる窒素・リン酸・カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などの栄養成分についても実際に分析し、一般的な培養土と比較しています。

水苔そのものの栄養や、ビカクシダに肥料を与える意味について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

そして、水苔の「肥料環境」を考える場合には、一般的な土壌とは少し違った視点が必要です。

その鍵になるのが窒素です。

3.植物の成長に欠かせない「窒素」とは

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記事内の画像

肥料のパッケージには、

N-P-K

という表示があります。

N 窒素
P リン酸
K カリウム

Nは窒素、Pはリン酸、Kはカリウムを表しており、植物の生育に特に重要な「肥料の三要素」です。

なかでも「窒素」は、植物の葉や茎の成長に深く関係しています。

窒素は植物の体をつくるアミノ酸やタンパク質、核酸などの材料となり、光合成に必要なクロロフィルの形成にも深く関係しています。

そのため窒素が不足すると、葉色が薄くなったり、葉や茎の成長が鈍くなったりすることがあります。

胞子葉や貯水葉を成長期に次々と展開しながら成長するビカクシダにとっても、窒素は欠かすことのできない栄養素です。

ただし、肥料選びでは単純に、

QUESTION 01

「現地の環境から考えて、有機系の肥料が適している?」

QUESTION 02

「葉を成長させたいから窒素が多い方が良い?」

と考えるだけでなく、もう一歩踏み込んで考えてみたいポイントがあります。

それが、窒素の「形」です。

4.アンモニア態窒素と硝酸態窒素の違い

植物が根から吸収する代表的な無機態窒素には、アンモニア態窒素と硝酸態窒素があります。まずは、それぞれの特徴を整理してみましょう。

NH₄⁺

アンモニア態窒素

土に保持されやすく、植物が根から直接吸収できる窒素です。土の中では、一部が微生物の働きによって硝酸態窒素へ変化します。

NO₃⁻

硝酸態窒素

植物が根から直接吸収できる窒素です。アンモニア態窒素の硝化によって生じるほか、肥料からも補給できます。硝酸態窒素として与えれば、微生物による硝化を待たずに利用できます。

植物はアンモニア態窒素と硝酸態窒素の両方を利用できます。適したバランスは植物の種類や栽培環境によって異なりますが、多くの植物はアンモニア態窒素よりも硝酸態窒素を好んで吸収します。

肥料選びでは、窒素の量に加え、どの形で含まれているかを見ることも大切です。そして、与えた窒素の形が根の周りでどう変化するかには、培地にいる微生物が関わります。次の章では、この変化を見ていきましょう。

5.土の中の微生物が行う「硝化」とは

アンモニア態窒素が微生物の働きによって、亜硝酸態窒素を経て硝酸態窒素へ変化していく過程を「硝化」と呼びます。

微生物によって、窒素の形が変わる

NH₄⁺アンモニア態窒素
↓

アンモニア酸化細菌などの働き

NO₂⁻亜硝酸態窒素
↓

亜硝酸酸化細菌などの働き

NO₃⁻硝酸態窒素

つまり、肥料としてアンモニア態窒素を与えても、そのすべてが同じ形のまま根の周りに存在し続けるわけではありません。微生物の働きによって、植物が利用する窒素の形も変わっていきます。

「植物+肥料+土+微生物」

土の中では、植物による吸収に加えて微生物による変化も起こり、窒素の循環を支えています。硝化は、その中の一つの過程です。

土壌中で行われる窒素循環と硝化のイメージ+ タップして拡大閉じる ×

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土壌中で行われる窒素循環と硝化のイメージ

では、ビカクシダを育てている水苔でも、同じような硝化が行われているのでしょうか。次に、実際の水苔の分析結果を見てみましょう。

6.水苔の中の微生物を分析してみた

水苔に存在する微生物

水苔は無菌ではありません。

実際にビカクシダの栽培に使用した水苔を調べると、さまざまな微生物が存在しています。(㈱SOFIX 26年8月4日 水苔の総細菌数測定結果より)

ビカクシダ栽培に使用した水苔の微生物分析結果+ タップして拡大閉じる ×

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ビカクシダ栽培に使用した水苔の微生物分析結果

しかし、

「微生物が存在する」ことと「硝化が十分に行われている」ことは別の問題です。

そこで今回、さらに実際にビカクシダの栽培に使用した水苔について、アンモニア態窒素を硝酸態窒素へ変えていく「硝化」に関係する微生物の有無について分析を行いました。

水苔に含まれるアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌の分析結果+ タップして拡大閉じる ×

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水苔に含まれるアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌の分析結果

今回の分析結果から、水苔には硝化に関わる微生物(アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌)がほとんど存在せず、一般的な土壌と同じような窒素の循環を期待することは難しいと考えられます。

7.肥料の与え方に注意|アンモニア障害とは

では、アンモニア態窒素が硝酸態窒素へ変化しにくい環境では、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

ここで知っておきたいのが、アンモニア態窒素が過剰になった場合に起こりうる「アンモニア障害(アンモニウム毒性)」です。

アンモニア態窒素は植物が利用できる重要な窒素源です。

しかし、アンモニア態窒素が十分に植物に吸収されない環境が長く続くと、植物の種類や濃度、pHなどの条件によっては、生育に悪影響を及ぼすことがあります。

アンモニア障害で見られる主な症状

アンモニア障害で発生しやすい植物のトラブルは以下の通りです。

STAGE 01 アンモニアが集積

第1段階:アンモニアが集積し、全体的に葉が暗緑色に濃くなる。

STAGE 02 ガス害などが発生

第2段階:アンモニアが分解出来ず、ガス害が発生し、以下症状が発現する。

全体的な生育抑制
根の伸長不良
葉の奇形や不良
新しい葉の黄化

なかなか肥料が効かないな、早く大きく育てたいな、と思って肥料を与え続けていたら、硝化が進まず、いつのまにかアンモニアが蓄積して、さらに状態が悪化してしまう・・・

こんなビカクシダのトラブルに心当たりはありませんか?

ビカクシダに見られるアンモニア障害の症状+ タップして拡大閉じる ×

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ビカクシダに見られるアンモニア障害の症状

多くの植物はアンモニア態窒素よりも硝酸態窒素を好む傾向にありますが、アンモニア態窒素に対する耐性は植物によって異なります。イネ科の植物はアンモニア態窒素を比較的好む傾向にあるため、必ずしも「アンモニア態窒素=悪い肥料」ということではありません。

9.まとめ|ビカクシダの肥料は「窒素の量」だけでなく「形」にも注目

ビカクシダでよく使われる水苔は、保水性に優れ、軽く板付けにも使いやすい優れた栽培資材です。

しかし、水苔は一般的な土壌とは微生物環境も大きく異なります。

水苔にも微生物は存在しますが、今回の分析結果からは、一般的な土壌と同じような硝化を期待できるとは限らないことが見えてきました。

アンモニア態窒素は植物が利用できる窒素源ですが、アンモニア態窒素に大きく偏った環境が続けば、植物の種類や栽培条件によってはアンモニア障害につながる可能性があります。

ビカクシダに肥料を与えているのに、なかなか大きくならない。胞子葉や貯水葉の展開が遅く感じる。そんなときは、肥料の量だけでなく、「どんな環境で、どんな形の栄養を与えているか」に目を向けてみるのもひとつです。

CHECK 水苔で肥料を考えるときのポイント
  • 水苔は一般的な土壌とは異なる環境
  • 水苔にも微生物はいるが、硝化が十分とは限らない
  • 窒素は量だけでなく「形」にも注目する
  • 硝酸態窒素とアンモニア態窒素のバランスを見る

水苔そのものの「栄養」も確認してみよう

そして、もうひとつ気になるのが、ビカクシダの植え込み材として使っている「水苔そのもの」の栄養です。

一見すると土のように植物を支えている水苔ですが、そもそも水苔には窒素やリン酸、カリウムなどの栄養がどのくらい含まれているのでしょうか。そして、水苔だけでビカクシダの生育に必要な栄養をまかなうことはできるのでしょうか。

自然暮らしでは、実際の水苔に含まれるN・P・K、カルシウム、マグネシウム、鉄などの栄養成分についても分析しました。

「水苔にはどのくらい栄養があるのか」「なぜビカクシダに肥料を与える必要があるのか」をもう少し深く知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

ビカクシダの基本的な育て方もチェック

肥料や水苔だけでなく、ビカクシダを健康に育てるためには、光、風、水やり、温度など日々の管理も大切です。

置き場所や水やりのタイミング、季節ごとの管理など、ビカクシダの育て方全体を確認したい方はこちらの記事をご覧ください。

水苔で育てるビカクシダと肥料選び+ タップして拡大閉じる ×

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水苔で育てるビカクシダと肥料選び

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