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ビカクシダに肥料は必要?水苔の栄養成分を分析してわかったこと

ビカクシダの植え込み材として、広く使われている「水苔(ミズゴケ)」。

保水性が高く、適度な通気性も確保しやすいため、ビカクシダやランなどの着生植物の栽培では定番の植え込み材です。

では、この水苔には、植物が成長するために必要な「栄養」も十分に含まれているのでしょうか。

植物の成長には、窒素・リン・カリウムをはじめ、カルシウムやマグネシウム、鉄など、さまざまな栄養素が必要です。

そこで自然暮らしでは、水苔にどのくらいの栄養成分が含まれているのかを実際に分析し、一般的な培養土と比較してみました。

今回はその分析結果から、水苔にはどのような栄養が含まれているのか、そして水苔でビカクシダを育てる場合、肥料をどのように考えればよいのかを見ていきます。

水苔に含まれる栄養成分とビカクシダの肥料について

1.ビカクシダでよく使われる「水苔」とは?

ビカクシダは、自然界では樹木などに着生して育つ植物です。

そのため家庭での栽培でも、一般的な観葉植物のように土へ植えるだけではなく、水苔で根の周囲を包み、板などに着生させて育てる方法が広く使われています。

水苔が好まれる理由のひとつが、水分を保持しながら、根の周囲に空気も確保しやすいことです。

さらに軽量で形を整えやすいため、板付けにも使いやすく、ビカクシダの植え込み材として優れた特徴を持っています。

水苔を使って育てるビカクシダ

一方で、ここで知っておきたいことがあります。

「植物の根に適した環境をつくること」と「植物に十分な栄養を供給すること」は別です。

一般的な培養土にはさまざまな栄養成分が含まれ、製品によってはあらかじめ肥料が配合されているものもあります。

では、水苔そのものには、どのくらい植物の栄養が含まれているのでしょうか。

ビカクシダの基本的な育て方を知りたい方へ

水苔の栄養について考える前に、ビカクシダの置き場所や水やり、季節ごとの管理など、まず基本的な育て方から確認したいという方もいるかもしれません。

自然暮らしでは、ビカクシダを育てるうえで知っておきたい基本的なポイントもまとめています。ビカクシダをこれから育て始める方や、日々の管理方法を見直したい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

ビカクシダの育て方|置き場所・水やりなど基本の管理方法を見る

2.植物の生育に欠かせない「肥料の三要素 N・P・K」

植物が成長するためには、さまざまな元素が必要です。

その中でも、肥料を考えるうえで基本となるのが、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)の3つです。一般に「肥料の三要素」と呼ばれています。

植物の肥料の三要素 N・P・Kの働き

窒素(N)の役割

アミノ酸やたんぱく質などの構成成分となり、葉や茎など植物体の成長に欠かせない元素です。

リン酸(P)の役割

植物体内のエネルギー代謝などに関わり、根の生育や新しい組織の形成にも重要です。

カリウム(K)の役割

浸透圧の調節や気孔の開閉、さまざまな酵素の働きなどに関わり、植物体内の水分や養分の移動を助け、生育を支えています。

ビカクシダが根を伸ばし、新しい胞子葉や貯水葉を展開していくためにも、こうした栄養素が必要になります。

3.実際に水苔のN・P・Kを分析してみました

では、水苔には実際にどのくらいのN・P・Kが含まれているのでしょうか。

自然暮らしでは、水苔と一般的な培養土に含まれる栄養成分を分析し、比較してみました。

水苔と一般培養土のN・P・K分析結果比較

分析結果を見ると、水苔からも窒素・リン酸・カリウムのすべてが検出されています。

つまり、水苔は「栄養がまったく含まれていない植え込み材」というわけではありません。

窒素は水苔158mg/100gに対して一般培養土234mg/100g、カリウムは水苔92mg/100gに対して一般培養土112mg/100gでした。

一方で、大きな違いが見られたのがリン酸です。

今回分析した水苔では36mg/100gだったのに対し、一般培養土では276mg/100gという結果になりました。

このように、水苔にもN・P・Kは含まれていますが、今回比較した一般培養土とは、その量やバランスが異なっていることが分かります。

4.N・P・Kだけではない。カルシウムとマグネシウムも分析

植物に必要なのは、N・P・Kだけではありません。

植物が比較的多く必要とする栄養素として、カルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)も重要な成分です。

カルシウム(Ca)がビカクシダに必要な理由

カルシウムは、植物の細胞壁など身体をつくるうえで重要な元素です。植物の組織を健全に形成していくために必要で、特に新しい葉や根など、これから成長していく部分で重要な役割を担っています。

また、カルシウムは植物体内を移動しにくい元素のため、不足すると新しく成長している葉や根などに影響が現れやすいのも特徴です。

新しい胞子葉・貯水葉、根を次々と展開していくビカクシダにとっても、N・P・Kだけでなく意識しておきたい栄養素のひとつです。

マグネシウム(Mg)がビカクシダに必要な理由

マグネシウムは、光合成に欠かせない葉緑素(クロロフィル)の中心に存在する元素です。植物が光を受けて光合成を行うために欠かすことのできない栄養素のひとつです。

また、マグネシウムは葉緑素だけでなく、植物体内のさまざまな酵素の働きやエネルギー代謝にも関わっています。

ビカクシダの美しい色の胞子葉を維持しながら成長させていくうえでも、重要な栄養素です。

水苔と一般培養土のCa・Mgを比較

そこで、水苔に含まれるCa・Mgについても一般培養土と比較しました。

水苔と一般培養土のカルシウム・マグネシウム分析結果比較

今回比較した一般培養土に対して、水苔ではCa・Mgともに含有量が少ない結果となりました。

特にカルシウムでは、水苔71mg/100gに対して一般培養土868mg/100gと、大きな差が確認されました。

肥料というと、パッケージに大きく表示されているN・P・Kに目が向きがちですが、植物が健全に生育していくためには、N・P・K以外の栄養も必要になってきます。

特に成長期に貯水葉、胞子葉を次々に展開していくビカクシダを美しく育てるのであれば、N・P・Kだけでなく、CaやMgなども含めて栄養を考えることがポイントになります。

5.鉄やマンガンなどの「微量要素」は?

植物が必要とする量はわずかでも、生育に欠かすことのできない元素があります。

それが微量要素です。

代表的なものには、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)などがあります。

今回の分析では、水苔からも鉄やマンガン、ホウ素などがわずかながら検出されましたが、なかでも一般培養土と比較して差が大きかったのは鉄(Fe)となりました。

水苔と一般培養土に含まれる鉄などの微量要素の比較

水苔に含まれる鉄はどのくらい?

今回分析した水苔では、鉄が4mg/100gだったのに対して、一般培養土では1,793mg/100gという結果になりました。

鉄は植物の生育に欠かせない必須微量要素のひとつです。

葉緑素そのものを構成する元素ではありませんが、葉緑素の生成に関わる反応や、光合成における電子伝達などに重要な役割を担っています。

鉄以外にも、マンガンやホウ素、亜鉛、銅、モリブデンなどの微量要素は、植物が必要とする量こそわずかですが、植物が健康に生育するために欠かすことのできない栄養素です。

それぞれが光合成や酵素の働き、植物体内のさまざまな代謝などに関わっており、N・P・Kだけを補えば十分というわけではありません。

特に水苔は、一般的な培養土のように栄養を供給することを目的とした植え込み材ではありません。

そのため、水苔という限られた環境でビカクシダを長く育てていく場合には、N・P・Kだけでなく、マグネシウムや鉄をはじめとする微量要素についても、肥料などから意識的に補っていくことが大切です。

6.水苔で育てるビカクシダには、どんな肥料がいい?

今回の分析結果より、水苔はN・P・Kの栄養素は若干保有しているものの、ビカクシダが成長を続けていくには物足りず、またマグネシウム、鉄を含めた微量要素も少ないことが分かりました。

では、水苔でビカクシダを育てる場合、どのように栄養を補うのが良いでしょうか。

ポイントは、N・P・Kだけでなく、マグネシウムや微量要素まで含めて、成長に必要な栄養をバランスよく補うことです。

特に板付けしたビカクシダでは、水やりの際に水苔全体を濡らして管理することが多いため、水に溶かして水やりと一緒に与えられる液体肥料は取り入れやすい選択肢です。

N・P・K+Mg・微量要素をまとめて補える肥料

自然暮らしの「水に溶かして速く効く粉末液肥」は、N(窒素)9%・P(リン酸)8%・K(カリウム)28%・Mg(マグネシウム)3.5%に加え、マンガン0.1%、ホウ素0.1%、さらに鉄・銅・亜鉛・モリブデンなどの微量要素を配合しています。

N・P・Kだけでなく、マグネシウムや微量要素まで一度に補えることが特徴です。

また、窒素9%の内訳は、硝酸態窒素7.5%、アンモニア態窒素1.5%。窒素全体の約83%を硝酸態窒素が占めています。

硝酸態窒素は、微生物による硝化を経なくても植物が根から直接吸収できる窒素の形です。

そのため、一般的な土壌と比べて硝化に関わる微生物が少ない水苔での栽培でも、取り入れやすい窒素の形のひとつと考えられます。

粉末はサッと水に溶けやすく、水やりと一緒に肥料成分を水苔全体へ行き渡らせやすいため、鉢植えだけでなく板付けしたビカクシダにもおすすめの液体肥料です。

ビカクシダにおすすめの自然暮らし 水に溶かして速く効く粉末液肥

「水に溶かして速く効く粉末液肥」の成分・使い方を詳しく見る

肥料選びでは「窒素の形」にも注目

水苔でビカクシダを育てる場合は、N・P・Kの量だけでなく、硝酸態窒素とアンモニア態窒素の違いにも注目したいところです。

自然暮らしでは、実際に水苔に存在する微生物を分析し、「水苔の微生物」と「窒素の形」の関係についても調べています。

ビカクシダの肥料は「窒素の形」も重要?水苔の微生物を分析した記事はこちら

肥料を与えるだけで終わらせない。「二価鉄(Fe²⁺)」を補う

今回の分析では、水苔に含まれる鉄は、比較した一般培養土よりも少ない結果となりました。

鉄は必要量こそわずかですが、植物の生育に欠かすことのできない必須微量要素です。葉緑素の生成に関わる反応や光合成の電子伝達、さまざまな酵素の働きなど、植物の生育を支える重要な役割を担っています。

つまり、N・P・Kなどの肥料成分を与えるだけでなく、与えた栄養を植物の生育につなげていくためにも、鉄は重要な栄養素のひとつなのです。

そして鉄を補ううえでは、量だけでなく、「植物が利用しやすい形であるか」にも注目したいところです。

自然暮らしの「水でうすめる植物のための活力剤」は、鉄を植物が利用しやすい形のひとつである二価鉄(Fe²⁺)として配合しています。

二価鉄Fe2+を配合した自然暮らし 水でうすめる植物の活力剤

肥料でN・P・Kなどの栄養を補い、二価鉄を配合した活力剤で植物の生育をサポートする。

せっかく与えた肥料を、無駄にしない。

水苔でビカクシダを育てる際には、N・P・Kだけでなく、こうした微量要素まで含めた栄養管理を意識してみるのもおすすめです。

二価鉄(Fe²⁺)配合「水でうすめる植物の活力剤」を詳しく見る

7.まとめ|肥料を増やす前に「栄養の中身」を見てみよう

「肥料を与えているのに、ビカクシダがなかなか大きくならない」

「胞子葉や貯水葉の展開が遅く感じる」

そんなとき、つい肥料を与える回数を増やしたり、濃くしたりしたくなるかもしれません。

しかし、その前に一度確認してみたいのが、「どのくらい与えているか」だけでなく、「何を与えているか」です。

今回、水苔と一般培養土の栄養成分を比較したところ、水苔にもN・P・Kをはじめとする栄養成分が含まれている一方で、マグネシウムや微量要素など含有が少ないことが分かりました。

水苔は、ビカクシダやランなどの着生植物を育てるうえで、根に適度な水分と空気を確保し、「根が育つ環境」をつくることに適した植え込み材です。

こうした水苔の特徴を活かしながらビカクシダを健康に育てていくためには、N・P・Kだけでなく、マグネシウムや鉄をはじめとする微量要素まで含め、成長に必要な栄養を肥料や活力剤などから補っていくことが大切です。

  • N・P・Kはバランスよく含まれているか
  • マグネシウムや微量要素を補えているか
  • 窒素はどのような形で配合されているか

肥料を与えているのになかなか育たないと感じたら、与える量を増やす前に、一度その「栄養の中身」を確認してみる。

水苔でビカクシダを育てるときの、肥料選びのひとつの基準にしてみてください。

水苔で育てるビカクシダ

さらに知りたい方へ|ビカクシダをもっと上手に育てるために

肥料や水苔の栄養だけでなく、置き場所・水やり・季節ごとの管理など、ビカクシダの育て方全体を確認したい方は、基本の育て方をまとめた記事もあわせてご覧ください。

ビカクシダの育て方|基本の管理方法を詳しく見る

さらに深く知りたい方へ|水苔の微生物と「窒素の形」

そして、水苔での肥料選びをもう一歩深く考えるうえでポイントになるのが、「窒素の形」と「水苔に存在する微生物」です。

自然暮らしでは、水苔に含まれる微生物についても実際に分析しました。

アンモニア態窒素と硝酸態窒素の違いや、水苔の微生物と肥料選びの関係については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

関連記事:
ビカクシダにおすすめの肥料は?水苔の微生物と窒素から考える肥料の選び方

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